日々の生活を大切に。
星野源のエッセイ集を読んでいる。
まさか読んで十数分で、「たはー!」と言いたくなるとは思わなかった。え?例えがわかりにくい?これまた、たはー。
まあ、いわゆる、痛いとこつかれたな、といった類の感嘆の意なのだけれどもまあ、それはひとまずさておき。
星野源は日々の生活から逃避するように演劇やアニメに浸り、そしてその道を志すようになった。が、その道を歩めども、逃避の場が仕事に変わっただけで、家に帰りひとりになれば、子供の頃にアニメを見終えた時と同じように、ただただ虚無感に襲われていたのだとか。そうしてその虚無感から逃げるように仕事に打ち込み、仕事にどっぷり浸かっていたある日、星野源は倒れてしまう。診断結果は過労。入院することとなり、あまりの身体の痛みに心細くなった彼は母親を病室に呼ぶ。
そうして母親が過労で倒れたと知った時の言葉がなかなかに身に染みる。
「掃除とか洗濯とかそういう毎日の地味な生活を大事にしないでしょあんた。だからそういうことになるの」
たはー!!!!
もう全く同じです。ここ数ヶ月仕事が楽しすぎて生活が蔑ろな私は後ろからナイフで刺されたような気になった。いや、仕事してなくても日々の生活蔑ろなんですけど。
生活から逃げるように仕事に打ち込む、という言葉が今の私にしっくりと、来てしまった。
どうもこの本とは巡り合わせがあるようである。この話の前の章では携帯料金未払いの話をしていたのだが、最近私も、うっかり年金で数ヶ月未払いになっていた分を整理して来たところである。支払いを終えると何か憑き物が落ちたのか、部屋の掃除をするようになった。
私も、日々の生活を見直し始めた矢先である。
そうして昨日はIKEAなぞに足を運び、素敵な家具で日々の生活をそれ、彩ってやろうかな、なぞと考えてみたものの、ショールームの中で私の手は止まってしまった。
あれ…?私の部屋って…何置いてるっけ…?
そう、部屋の色んなものを適当にして来た結果、日々の生活を蔑ろにした結果がこれである。
日々の生活の舞台である自分の部屋のインテリアがわからないのである。
ええと…確かベッド周辺はカフェ風インテリアに憧れて茶色と紺でまとめてたな…カーテンもそれに合わせて茶色…あ、でも待て待て、デスク周辺は白い足に明るめの木目が素敵なIKEAデスクだ、そーだ私あの時IKEAの開放的な雰囲気に触発されて部屋をGoogle風にする!とかって言ってたような。え?カフェ風ではなくない?無理じゃね?
インテリアも適当って、私、どれだけ日々を適当に生活して来たの?
たはー!!!
IKEAで私のたはーが炸裂した。
もちろん口にすることはなくとも心の中はたはーで染められてしまった。
まさかIKEAの家具たちに痛いところを突かれるとは。
私、今までどれだけ日々の生活を蔑ろにしてたんだろう?
やたらと洒落た名前がつけられたシングルチェア、"POÄNG"に体を委ねながら私は後悔をした。
緩やかにしなるチェアフレームが、まるで私を許してくれるかのように柔らかく私を包んでくれていた。
そんなわけで私は今、片付けに勤しんでいる。
とりあえず、IKEAでは前から欲しかったデスクライトを買った。これはもう本当に、欲しかっただけあって部屋ともマッチしている。
ただ、ベッド横につけようと思って買ったワークライトは想像以上に大きくて、今私の部屋は手術室の趣を醸し出し始めている。明日にでもブラックジャックがここでオペを始めそうである。
私の生活は、どこへ向かうんだろう?
それはわからないけど、でも今年は、いや今年こそは。
きちんと毎日を生きていきたいな、なんて。
そんな風に思ってます。